厚生労働省資料集

里親及びファミリーホーム養育指針

平成24年3月29日
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知

※尚、この養育指針についてのハンドブックを全国里親会で制作・発行していますので、そちらも合わせてご覧ください。ハンドブックはこちらです。

第Ⅰ部 総論
1.目的
・この「養育指針」は、里親及びファミリーホームにおける養育の内容と運営に関する指針を定めるものである。社会的養護を担う里親及びファミリーホームにおける養育の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、説明責任を果たすことにもつながるものである。
・この指針は、そこで暮らし、そこから巣立っていく子どもたちにとって、よりよく生きること(well-being)を保障するものでなければならない。また社会的養護には、社会や国民の理解と支援が不可欠であるため、里親及びファミリーホームを社会に開かれたものとし、地域や社会との連携を深めていく努力が必要である。
・家庭や地域における養育機能の低下が指摘されている今日、社会的養護のあり方には、養育のモデルを示せるような水準が求められている。子どもは子どもとして人格が尊重され、子ども期をより良く生きることが大切であり、また、子ども期における精神的・情緒的な安定と豊かな生活体験は、発達の基礎となると同時に、その後の成人期の人生に向けた準備でもある。
・この指針は、こうした考え方に立って、社会的養護の様々な担い手との連携の下で、社会的養護を必要とする子どもたちへの適切な支援を実現していくことを目的とする。
2.社会的養護の基本理念と原理
(1)社会的養護の基本理念
①子どもの最善の利益のために
・児童福祉法第1条で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定され、児童憲章では「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、良い環境の中で育てられる。」とうたわれている。
・児童の権利に関する条約第3条では、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されている。
・社会的養護は、子どもの権利擁護を図るための仕組みであり、「子どもの最善の利益のために」をその基本理念とする。
平成24年3月29日
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知
里親及びファミリーホーム養育指針
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②すべての子どもを社会全体で育む
・社会的養護は、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、公的責任で社会的に保護・養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うものである。
・子どもの健やかな育成は、児童福祉法第1条及び第2条に定められているとおり、すべての国民の努めであるとともに、国及び地方公共団体の責任であり、一人一人の国民と社会の理解と支援により行うものである。
・児童の権利に関する条約第20条では、「家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。」と規定されており、児童は権利の主体として、社会的養護を受ける権利を有する。
・社会的養護は、「すべての子どもを社会全体で育む」をその基本理念とする。
(2)社会的養護の原理
社会的養護は、これを必要とする子どもと家庭を支援して、子どもを健やかに育成するため、上記の基本理念の下、次のような考え方で支援を行う。
①家庭的養護と個別化
・すべての子どもは、適切な養育環境で、安心して自分をゆだねられる養育者に よって、一人一人の個別的な状況が十分に考慮されながら、養育されるべきである。
・一人一人の子どもが愛され大切にされていると感じることができ、子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活の保障が必要である。
・社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要であり、社会的養護を地域から切り離して行ったり、子どもの生活の場を大規模な施設養護としてしまうのではなく、できるだけ家庭あるいは家庭的な環境で養育する「家庭的養護」と、個々の子どもの育みを丁寧にきめ細かく進めていく「個別化」が必要である。
②発達の保障と自立支援
・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形
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成していくことが必要である。
③回復をめざした支援
・社会的養護を必要とする子どもには、その子どもに応じた成長や発達を支える支援だけでなく、被虐待体験や分離体験などによる悪影響からの癒しや回復をめざした専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援も必要となる。
・また、近年増加している被虐待児童や不適切な養育環境で過ごしてきた子どもたちは、被虐待体験だけでなく、家族や親族、友達、近所の住人、保育士や教師など地域で慣れ親しんだ人々との分離なども経験しており、心の傷や深刻な生きづらさを抱えている。さらに、情緒や行動、自己認知・対人認知などでも深刻なダメージを受けていることも少なくない。
・こうした子どもたちが、安心感を持てる場所で、大切にされる体験を積み重ね、信頼関係や自己肯定感(自尊心)を取り戻していけるようにしていくことが必要である。
④家族との連携・協働
・保護者の不在、養育困難、さらには不適切な養育や虐待など、「安心して自分をゆだねられる保護者」がいない子どもたちがいる。また子どもを適切に養育することができず、悩みを抱えている親がいる。さらに配偶者等による暴力(DV)などによって「適切な養育環境」を保てず、困難な状況におかれている親子がいる。
・社会的養護は、こうした子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざして、それに的確に対応するため、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって、子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みである。
⑤継続的支援と連携アプローチ
・社会的養護は、その始まりからアフターケアまでの継続した支援と、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
・児童相談所等の行政機関、各種の施設、里親等の様々な社会的養護の担い手が、それぞれの専門性を発揮しながら、巧みに連携し合って、一人一人の子どもの社会的自立や親子の支援を目指していく社会的養護の連携アプローチが求められる。
・社会的養護の担い手は、同時に複数で連携して支援に取り組んだり、支援を引き継いだり、あるいは元の支援主体が後々までかかわりを持つなど、それぞれの機能を有効に補い合い、重層的な連携を強化することによって、支援の一貫性・継続性・連続性というトータルなプロセスを確保していくことが求められる。
・社会的養護における養育は、「人とのかかわりをもとにした営み」である。子どもが歩んできた過去と現在、そして将来をより良くつなぐために、一人一人の子どもに用意される社会的養護の過程は、「つながりのある道すじ」として子
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ども自身にも理解されるようなものであることが必要である。
⑥ライフサイクルを見通した支援
・社会的養護の下で育った子どもたちが社会に出てからの暮らしを見通した支援を行うとともに、入所や委託を終えた後も長くかかわりを持ち続け、帰属意識を持つことができる存在になっていくことが重要である。
・社会的養護には、育てられる側であった子どもが親となり、今度は子どもを育てる側になっていくという世代を繋いで繰り返されていく子育てのサイクルへの支援が求められる。
・虐待や貧困の世代間連鎖を断ち切っていけるような支援が求められている。
(3)社会的養護の基盤づくり
・社会的養護は、かつては親のない、親に育てられない子どもを中心とした施策であったが、現在では、虐待を受けた子ども、何らかの障害のある子ども、DV被害の母子などが増え、その役割・機能の変化に、ハード・ソフトの変革が遅れている。
・社会的養護は、大規模な施設養護を中心とした形態から、一人一人の子どもをきめ細かく育み、親子を総合的に支援していけるような社会的な資源として、ハード・ソフトともに変革していかなければならない。
・また、家庭的養護の推進は、養育の形態の変革とともに、養育の内容も刷新していくことが必要である。
・社会的養護は、家庭的養護を推進していくため、原則として、地域の中で養育者の家庭に子どもを迎え入れて養育を行う里親やファミリーホームを優先するとともに、児童養護施設、乳児院等の施設養護も、できる限り小規模で家庭的な養育環境(小規模グループケア、グループホーム)の形態に変えていくことが必要である。
・施設は、社会的養護の地域の拠点として、施設から家庭に戻った子どもへの継続的なフォロー、里親支援、社会的養護の下で育った人への自立支援やアフターケア、地域の子育て家庭への支援など、専門的な地域支援の機能を強化し、総合的なソーシャルワーク機能を充実していくことが求められる。
・ソーシャルワークとケアワークを適切に組み合わせ、家庭を総合的に支援する仕組みづくりが必要である。
・社会的養護の役割はますます大きくなっており、これを担う人材の育成・確保が重要な課題となっている。社会的養護を担う機関や組織においては、その取り組みの強化と運営能力の向上が求められている。
3.里親・ファミリーホームの役割と理念
(1)里親・ファミリーホームの役割
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・里親は、児童福祉法第6条の4の規定に基づき、要保護児童を養育することを希望する者であって、都道府県知事が児童を委託する者として適当と認めるものをいう。
・ファミリーホームは、児童福祉法第6条の3第8項の規定に基づき、要保護児童の養育に関し相当の経験を有する者の住居において養育を行うものをいう。
・里親及びファミリーホームが行う養育は、委託児童の自主性を尊重し、基本的な生活習慣を確立するとともに豊かな人間性及び社会性を養い、かつ、将来自立した生活を営むために必要な知識及び経験を得ることができるように行わなければならない。
(2)里親・ファミリーホームの理念
・里親及びファミリーホームは、社会的養護を必要とする子どもを、養育者の家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」である。
・また、社会的養護の担い手として、社会的な責任に基づいて提供される養育の場である。
・社会的養護の養育は、家庭内の養育者が単独で担えるものではなく、家庭外の協力者なくして成立し得ない。養育責任を社会的に共有して成り立つものである。また、家庭内における養育上の課題や問題を解決し或いは予防するためにも、養育者は協力者を活用し、養育のありかたをできるだけ「ひらく」必要がある。
・里親制度は、養育里親、専門里親、養子縁組里親、親族里親の4つの類型の特色を生かしながら養育を行う。また、ファミリーホームは、家庭養護の基本に立って、複数の委託児童の相互の交流を活かしながら養育を行う。
4.対象児童
・里親及びファミリーホームに委託される子どもは、新生児から年齢の高い子どもまで、すべての子どもが対象となる。
・保護者のない子どもや、親から虐待を受けた子ども、親の事情により養育を受けられない子どもなど、子ども一人一人の課題や状況に則し、最も適合した里親等へ委託される。
・また、保護者による養育が望めず養子縁組を検討する子どもや、実親との関係も保ちながら長期間の養育を必要とする子ども、あるいは、保護者の傷病などで短期間の養育を必要とする子どもなど、社会的養護を必要とする期間も多様である。
・障害のある子どもや非行の問題がある子どもなど個別的な支援を必要とする子どもは、適切に対応できる里親等に委託される。
・里親及びファミリーホームは、18歳に至るまでの子どもを対象としており、必要がある場合は20歳に達するまでの措置延長をとることができる。
・里親等は、委託された子どもの背景を十分に把握し、その子どもを理解して、必要な心のケアを含めて、養育を行わなければならない。
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5.家庭養護のあり方の基本
(1)基本的な考え方(家庭の要件)
・家庭は子どもの基本的な生活を保障する場である。家庭のあり方やその構成員である家族のあり方は多様化してきているが、子どもの養育について考慮した場合、家庭には養育を担う上での一定の要件も存在する。
・社会的養護における「家庭養護」は、次の5つの要件を満たしていなければならない。
①一貫かつ継続した特定の養育者の確保
・同一の特定の養育者が継続的に存在すること。
・子どもは安心かつ安全な環境で永続的に一貫した特定の養育者と生活することで、自尊心を培い、生きていく意欲を蓄え、人間としての土台を形成できる。
②特定の養育者との生活基盤の共有
・特定の養育者が子どもと生活する場に生活基盤をもち、生活の本拠を置いて、子どもと起居をともにすること。
・特定の養育者が共に生活を継続するという安心感が、養育者への信頼感につながる。そうした信頼感に基づいた関係性が人間関係形成における土台となる。
③同居する人たちとの生活の共有
・生活の様々な局面や様々な時をともに過ごすこと、すなわち暮らしをつくっていく過程をともに体験すること。
・これにより、生活の共有意識や、養育者と子ども間、あるいは子ども同士の情緒的な関係が育まれていく。そうした意識や情緒的関係性に裏付けられた暮らしの中での様々な思い出が、子どもにとって生きていく上での大きな力となる。
・また、家庭での生活体験を通じて、子どもが生活上必要な知恵や技術を学ぶことができる。
④生活の柔軟性
・コミュニケーションに基づき、状況に応じて生活を柔軟に営むこと。
・一定一律の役割、当番、日課、規則、行事、献立表は、家庭になじまない。
・家庭にもルールはあるが、それは一定一律のものではなく、暮らしの中で行われる柔軟なものである。
・柔軟で相互コミュニケーションに富む生活は、子どもに安心感をもたらすとともに、生活のあり方を学ぶことができ、将来の家族モデルや生活モデルを持つことができる。
・日課、規則や献立表が機械的に運用されると、子どもたちは自ら考えて行動するという姿勢や、大切にされているという思いを育むことができない。
・生活は創意工夫に基づき営まれる。そうした創意工夫を養育者とともに体験することは、子どもの自立に大きく寄与し、子どもにとって貴重な体験となる。
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⑤地域社会に存在
・地域社会の中でごく普通の居住場所で生活すること。
・地域の普通の家庭で暮らすことで、子どもたちは養育者自身の地域との関係や社会生活に触れ、生活のあり方を地域との関係の中で学ぶことができる。
・また、地域に点在する家庭で暮らすことは、親と離れて暮らすことに対する否定的な感情や自分の境遇は特別であるという感覚を軽減し、子どもを精神的に安定させる。
(2)家庭養護における養育
①社会的養護の担い手として
・里親及びファミリーホームにおける家庭養護とは、私的な場で行われる社会的かつ公的な養育である。
・養育者の家庭で行われる養育は、気遣いや思いやりに基づいた営みであるが、その担い手である養育者は、社会的に養育を委託された養育責任の遂行者である。
・養育者は、子どもに安心で安全な環境を与え、その人格を尊重し、意見の表明や主体的な自己決定を支援し、子どもの権利を擁護する。
・養育者は子どもにとって自らが強い立場にあることを自覚し、相互のコミュニケーションに心がけることが重要である。
・養育者は独自の子育て観を優先せず、自らの養育のあり方を振り返るために、他者からの助言に耳を傾ける謙虚さが必要である。
・家庭養護の養育は、知識と技術に裏付けられた養育力の営みである。養育者は、研修・研鑽の機会を得ながら、自らの養育力を高める必要がある。
・養育者が、養育がこれでよいのか悩むことや思案することは、養育者としてよりよい養育を目指すからこそであり、恥ずべきことではない。養育に関してSOSを出せることは、養育者としての力量の一部である。
・養育が困難な状況になった場合、一人で抱え込むのではなく、社会的養護の担い手として速やかに他者の協力を求めることが大切である。
・児童相談所、里親支援機関、市町村の子育て支援サービス等を活用し、近隣地域で、あるいは里親会や養育者同士のネットワークの中で子育ての悩みを相談し、社会的つながりを持ち、孤立しないことが重要である。
・家庭養護では、養育者が自信、希望や意欲を持って養育を行う必要がある。そのために自らの養育を「ひらき」、社会と「つながる」必要がある。
②家庭の弱さと強さの自覚
・子どもを迎え入れるどの家庭にも、その家庭の歴史があり、生活文化がある。養育者の個性、養育方針、養育方法等にはそれぞれ特色がある。また、地域特性もある。そして、これらには「弱さ」も「強さ」もある。
・新たに子どもが委託されたり、委託人数が減るなど構成員に変化が加わることで、不安定さが現れたり、安定性が増す変化があったり、養育者に柔軟な工夫が求
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められることもある。また、養育者が子どもの養育に心身の疲れを覚えたり、家族構成員の変化から養育力に影響が出る場合もある。
・それぞれの養育の場に含まれる「弱さ」の部分も自覚し、支援やサポートを受け、研修等を通して養育力を高めるとともに、ごく当たりまえの日常生活の中に含まれる、養育の「強さ(Strength)」をより発揮できるよう意識的に取り組む姿勢が求められる。養育者と子どもの日々の生活が養育者の成長にもなり得る。
③安心感・安全感のある家庭での自尊心の育み
・子どもにとって自尊心は、生きていく上で必要不可欠な自信、意欲や希望をもたらし、他者に対する寛容性や共感性、困難に立ち向かう力、粘り強さ、忍耐力の形成に結び付く。
・子どもが自分の存在について、「大切にされている」「生まれてきてよかった」と感じられるように、養育者の家庭は、子どもに安心感・安全感とともに、心地よさを提供することが重要である。
・生活が落ち着いてくると、子どもは、養育者との関係や許容範囲などを確かめる行動や退行を示すことがある。そのような時に、養育者は無力感を感じ、子どもに否定的感情を抱き、子どもとの関係が悪循環に陥ることもある。
・どうにか改善したいという思いが、子どもへの叱咤激励や、問題点の指摘に傾斜し、子どもにとって、あるがままの自分の存在が受け入れられないことに対する思いが、自尊心とは対極にある自己否定感を生み出すこともある。
・生活の中では、すぐに実感できる改善はみられなくても、変化を無理に求めず、子どもの実像を受けとめる。安心と安全のある家庭で、子どもと時間を共有し、思い出を積み重ねることで、子どもは変化していく。
④自立して生活できる力を育む
・自立とは、誰にも頼らないで生きていくことではなく、適宜他者の力を借りながら他者と関係を結びながら自分なりに生きていくことである。そのことを子どもが認識できるよう、まずは日常生活の中での安心感・安全感に裏付けられた信頼感を育むことが重要である。
・子どもには、あるがままの自分を受け入れてもらえるという依存の体験が必要である。日々自然にくり広げられ、くり返される家庭の中での日常生活のなかで、子どもの可能性を信じつつ寄り添うおとなの存在と歩みが、子どもにとって将来のモデルになる。
・子どもが生活を通して体験したこと、学習したことは、意識的、無意識的な記憶となり、生活の実体験が子どもに根づき、再現していくこととなる。
・困難な出来事があった際にどのように乗り超えていくかなどは、すべて子どもにとって重要な暮らしの体験であり、困ったとき、トラブルがあったときにはとくに他者に協力を求めるという姿勢が持てるよう、ともに生活する中でそうした体験を子どもに提供する。
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⑤帰ることができる家
・措置解除後においても、養育者と過ごした時間の長短にかかわりなく、子どもが成人した時、結婚する時、辛い時、困った時、どんな時でも立ち寄れる実家のような場になり、里親家庭やファミリーホームがつながりを持ち続けられることが望ましい。
・養育の継続が難しくなり、委託の解除となった場合でも、成長過程の一時期に特定の養育者との関係と家庭生活の体験を得たことは、子どもにとって意味を持つ原体験となるので、いつでも訪ねて来られるよう門戸を開けて待つことも大切である。
⑥ファミリーホームにおける家庭養護
・ファミリーホームは、養育者の住居に子どもを迎え入れる家庭養護の養育形態である。里親家庭が大きくなったものであり、施設が小さくなったものではない。
・ファミリーホームの養育者は、子どもにとって職員としての存在ではなく、共に生活する存在であることが重要である。したがって養育者は生活基盤をファミリーホームにもち、子どもたちと起居を共にすることが必要である。
・ファミリーホームの基本型は夫婦型であり、生活基盤をそこに持たない住み込み職員型ではない。児童養護施設やその勤務経験者がファミリーホームを設置する場合には、家庭養護の特質を十分理解する必要がある。
・養育者と養育補助者は、養育方針や支援の内容を相互に意見交換し、共通の理解を持ち、より良い養育を作り出す社会的責任を有している。
・養育補助者は、家事や養育を支援するとともに、ファミリーホーム内での養育が密室化しないよう、第三者的な視点で点検する役割も担うことを理解する。
・補助者が養育者の家族である場合には、養育がひらかれたものとなるよう、特に意識化することが必要である。
・ファミリーホームは、複数の子どもを迎え入れ、子ども同士が養育者と一緒に創る家庭でもある。子ども同士の安定を図るため、子どもを受託する場合は、子どもの構成や関係性を考慮し、児童相談所との連携が大切になる。また、養育者が子ども同士の関係を活かし、子ども同士が成長しあうために、どのようなかかわりが必要かという観点を持ちながら養育にあたることが必要となる。
(3)地域とのつながりと連携
①地域や社会へのひろがり
・子どもの育ちには、家庭が必要であると同時に、地域の人々や機関・施設の関与や支援が必要である。
・私的な生活の営みを軸とする家庭に子どもを迎え入れる場合であっても、公的な養育となる里親、ファミリーホームにおける養育には、地域社会と関係を結び、必要に応じて助け、助けられる関係を作る社会性が必要である。
・関係機関との協働はもとより、子どもの通園・通学先の職員、近隣住民が、委託
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されている子どもの状況を理解し養育を応援してくれる関係づくりを試みていくことが養育者に求められる。
・また、日頃から里親等も地域住民の一人として、近隣との良好な関係を築いておくことや、社会的養護の理解を深めてもらう働きかけをすることが重要である。
・なぜならば、子どもにとって養育者は地域に生き、社会に生きる大人のモデルであり、また、子どもの生活は、人々の社会的養護への理解度によって大きく影響されるからである。
・養育者の中には、社会的な状況や養育者の思いから地域の中に「里親家庭」として溶け込むことを求めず、ひっそりと生活したい里親もいるが、里親であることをオープンにしながら、近隣住民、関係者、関係機関、地域、社会に働きかけ、地域とのかかわりの中で養育を展開していく里親もいる。
・里親等における養育は、あくまで社会的養護であるため、地域や社会に対してクローズなものになってはならない。諸事情により近隣等との関係形成が困難な場合にも、地域の里親会や里親支援を行う民間団体、あるいはその他の子育て支援のネットワークなどのつながりの中に身をおき、孤立しないよう、独善的な養育に陥らないよう養育をひらくことが求められる。
・養子縁組里親の場合や親族による里親の場合は、地域との関係の持ち方が養育里親の場合とは異なる。しかし、それぞれの事情は踏まえた上でもなお、孤立した養育、独善的な養育とならないようにすることは同様である。また、親族による里親の場合、親族であるがゆえに、里親も子どももお互いに無理を強いられる場合がある。養育上の悩みや困難を共有できる場や人材を確保し、社会資源を活用しながら養育にあたることが望ましい。
②里親会等への参加
・日々の暮らしの中で起こる養育者としての悩み等は、時に社会的養護に携わる養育者の立場でしか共有できない、あるいは理解されにくいこともある。同じ立場で話すことができる里親会や当事者のネットワークを活用することは大切である。
・一方、他の養育者の体験談やアドバイスが、自己の養育に有効でない場合もある。このことに留意しながら、養育者同士による活動を活かすことが必要である。
・里親サロンなどでは、子どもの状況が具体的に語られることが少なくない。活動の前提として、語られた内容を活動の終了後どう扱うかを確認しておくことも必要である。
・里親会は、社会的養護の仕組みの中で重要な役割を持つことから、すべての里親は、里親会の活動に参加する必要がある。また、すべてのファミリーホームは里親会やファミリーホームの協議会に参加する必要がある。
③市町村の子育て支援事業の活用
・家庭養護は、保護者として地域で生活していることを理解し、市町村の子育て支援が必要であることを養育者自身や関係機関が受け止め、積極的に活用する。
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・生活が根ざしている身近な市町村の地域子育て支援につながることや利用できるサービスを活用していくことも、養育のサポートとしては有効である。また、地域子育て支援の活動等において力量を発揮し、支援する側として活躍する里親もいる。
・福祉事務所や関係機関と連携し、保育所や放課後児童クラブの活用やショートステイなど、レスパイト・ケアと併せて養育者は周囲の支援や協力を受けることは養育者の安定につながることを理解する。
・児童相談所から地域子育て支援機関に、里親等の情報が自動的に提供されることはないため、地域子育て支援機関に必要なかかわりは求めていくことが必要である。ただし、委託されている子どもの養育上の困難等は、地域子育て支援機関よりも、里親支援機関や支援担当者、児童相談所等に伝える方が適切な内容もあることを意識化しておく。
6.里親等の支援
①支援の必要性
・里親とファミリーホームは、地域に点在する独立した養育である。このため、閉鎖的で孤立的な養育となるリスクがある。
・里親とファミリーホームが社会的養護としての責任を果たすためには、外からの支援を受けることが大前提である。家庭の中に「風通しの良い部分」を作っておく必要がある。
②関係機関・支援者との養育チーム作り
・里親・ファミリーホームにおける養育は、家庭の中で行うが、決して自己完結型では行うことができないので、関係機関との連携・協働が不可欠である。関係機関・支援者とともに養育のチームを作っていく意識が必要である。
・一人一人抱えている状況や課題の異なる子どもの委託の目的・支援目標を理解し、その子どもの社会的養護の担い手、日々の養育者として、関係機関から支援を受け、随時状況を報告・相談しながら社会的養護を進めていくことが求められる。
・養育が難しいと感じる子どもについての専門的な助言や診断、治療的ケアの必要性の検討等、関係機関の見解がとくに必要な場合も、助言や連携を求めていくことが必要である。
・養育の「応援団」を確保していくことで社会的養護は成り立つことを常に意識したい。
・児童相談所や支援機関等は、定期的な家庭訪問を行うなど、日頃から里親と顔なじみになり、子どもと里親のことを理解する必要がある。里親もこれを受け入れることが必要である。
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第Ⅱ部 各論
1.養育・支援
(1)養育の開始
・里親及びファミリーホームにおける家庭養護は、子どもを養育者家族の生活の場である家庭に迎え入れて行う公的な養育であり、「中途からの養育」であることがその特徴である。
・養育者が子どもを迎え入れるとき、ともに生活する仲間として一緒に生活できることの喜びを子どもに伝えることから養育が始まる。
・子どもたちのそれまでの生活や人生を尊重し、不安や戸惑いがあることを前提として迎える。家庭に新しいメンバーが加わることによる変化は決して小さいものではなく、子どもたちが、養育者家庭の一員として落ちつくまでに要する時間も、子どもの個性や年齢、背景によって異なることを理解する。
・また、迎える家庭の構成員が、子どもを迎えることを望み、納得していることが重要である。
・既に受託している子どもや実子を含む、生活を共にしている子どもへの事前の説明や働きかけを行うとともに、心の揺れ動きなどに十分に配慮する。
(2)「中途からの養育」であることの理解
・実親子関係は根源的な人間関係である。その関係から引き離され、あらたな養育者と関係を形成することの重要性と、それに伴う子どもの困難さや行動上の課題等を理解した上で、子どもの育ち直しの過程を適切な対応により十分に保障する。
・子どもは被虐待的環境から安心・安全な環境に身を置くことで、養育者との関係や許容範囲などを確かめる行動や、いわゆる「赤ちゃん返り」と言われる退行を示すことがある。
・養育者がこうした行動を否定することなく受け入れることは、子どもの育ち直しの過程において必要不可欠である。
・養育者として対応に苦慮するときや対応方法が見つからない時等は、社会的養護の担い手として速やかに他者に協力を求めることが大切である。
・実子などを養育した過去の経験が、こうした子どもの養育過程において必ずしも有効に活用できないこともあり、むしろそうした体験が育ち直そうとしている子どもの養育を妨げる場合のあることを理解し、他者の助言や協力を求めることが必要である。
・子どもが抱えている否定的な自己認識を肯定的な認識に変化できるよう、子どもとともにそれまでの生育歴を反復して振り返り、整理することが必要である。
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(3)家族の暮らし方、約束ごとについての説明
・「日課」や「規則」がなく、集団生活ではない、あるいは、その要素が緩やかなことが家庭養護の良さである。しかし、ルールが全く無い、あるいは必要はないということではなく、個々の家庭には、その家庭の暮らし方がある。
・迎える子どもに、最低限必要な家庭の決まりを説明して、その子どもの意見を聞いた上で、合意を得ることが必要である。
・子どもと合意を得ることは、迎える家庭が、その家庭らしさを保つためであり、また、家庭に迎える子どもの適応を助け、暮らしやすさを実現するためにも必要である。
・細かすぎるルールを養育者が子どもに強要するのではなく、子どもの年齢や状況に応じて、子ども自身の意見を参考にして、適宜見直すことが必要である。
(4)子どもの名前、里親の呼称等
・子どもの「姓」、子どもの「名前」は、その子ども固有のものであり、かけがえのないものである。
・子どもを迎え入れた里親の姓を通称として使用することがあるが、その場合には、委託に至った子どもの背景、委託期間の見通しとともに、子どもの利益、子ども自身の意思、実親の意向の尊重といった観点から個別に慎重に検討する。
・里親の考え方もあるが、里親だけで決められるものではなく、関係者間での方針の確認が必要である。
・里父や里母の呼称について、お父さん、お母さん、おじさん、おばさん、○○(里親姓)のお父さん、お母さんなど受託された子どもの状況で決める。
・里親として子どもを迎えたことを近隣にどう伝えるかは、養育里親である場合や養子縁組希望里親の場合とでは子どもの状況が異なるため、よく検討して進める必要がある。
・養子縁組を希望する場合などは、子どもの年齢に応じて里親姓である通称を使用し、近隣や地域、学校等の関係者への説明や理解を得るよう働きかけることも大切である。
(5)幼稚園や学校、医療機関等との関係
・学校等は、子どもが1日の多くの時間を過ごす大切な生活の場である。学校との良好な協力関係を築くことにより、保護者と教師という関係だけでなく、同じ支援者の立場でのより有効な子どもへの支援に結びつけることができる。
・子どもが通う幼稚園や学校には、社会的養護を必要とする子どもの養育であることを伝え、よき理解者となってもらえるよう、働きかけることが必要である。
・子どもも、新しい生活の場に移行したことで幼稚園・学校で落ち着かず、順調にいかないこともある。里親側が心を閉じると、養育上の様々なリスクを高めて
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しまい、子ども自身に負荷をかけることもある。
・医療機関によっては、里親が社会的養護である家庭養護について説明しなくてはならない負担感を感じることがある。
・しかし、あきらめず必要な説明をするとともに、里親が抱えた思いを信頼できる人に聞いてもらったり、里親経験者の工夫や里親支援担当者からアイデアを聞いたりし、周囲に理解を求めていく姿勢を保つことが求められる。
・児童相談所の職員等が、新規委託児童の通う幼稚園や学校に里親とともに出向き、園長、校長、担任らに里親養育の理解を求めるための事前説明をし、子どもの姓の扱いなど要点を含めて確認する機会をもつ取組がなされている。社会との関係形成のプロセスに、必要に応じて児童相談所等の関係機関に支援を求めること、説明する言葉を得るためにしおり等を活用することも有効である。
(6)子どもの自己形成
・子どもの人生は、生まれた時から始まっている。自己の生い立ちを知ることは自己形成において不可欠である。真実告知は行うという前提に立ち、子どもの発達や状況に応じて伝え、子どもがどう受け止めているかを確かめつつ、少しずつ内容を深めていくことが大切である。
・「真実告知」は、単に「血縁上の親が別にいること」「養育者と血のつながりがないこと」を告げるという意味ではなく、主たる養育者である里親等が、「この世に生を受けたことのすばらしさ」「あなたと共に暮らせるようになった喜び」や子どもの生い立ちなどについて、嘘の無い「真実」として子どもに伝えることである。その「真実」をどのように表現をするかを配慮しなければならない。
・思春期の場合や小学校で行われる「生い立ちについての授業」などには、他の里親の経験や児童相談所からのアドバイス等を参考にして、学校関係者とも必要な理解や配慮の共有に努めながら、具体的に対処する。そのためにも、教育関係者との連携を日常的に築いておくことが重要である。
・真実告知のタイミングは、里親等が児童相談所や支援機関と相談の上、行うことが望ましい。
・ライフストーリーワークなど子どもの生きてきた歴史や子どもに寄せられて来た思いを綴り、写真や数値、できるようになったこと、かかわってくれた人・物などとともに記録としてまとめることも、子どもが、自らを「他者と違う固有の存在」「尊厳をもった大切な自分」であると気づき、自分を大切にし、誇りをもって成長するために有効である。
(7)実親との関係
・子どもにとっての実親は、子どもが自身を確認する上での源である。子どもの前で子どもの親の否定をしない。また、子ども自身から実親のことが語られる場
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面では、どう語られるかに耳を傾けるとともに、話されたことに養育者がどう応答するかについて配慮する。
・一見身勝手に思える実親の行動や態度に対し、背景にある実親なりの事情や実親自身の思いが十分に理解できず、養育者として否定的な感情を持つこともある。そのことを実親も敏感に察し、積極的な子どもへのかかわりを躊躇することも考えられる。養育者として実親の状況の理解や共感に努める姿勢は、子どものためにも必要である。
・子どもが実親に怒りを持ったり、実親に会えないことを自己否定的にとらえたり、里親等への配慮から実親について尋ねたい気持ちに遠慮することもある。実親について語ることを家庭内でのタブーとしないことも重要である。
・子どもの実親についての受け止め方は、養育者との生活のなかで変化し、子どもの心や日常生活、生き方に大きな影響を与える。子どもの立場に立って実親への思いを理解することが、養育者に不可欠である。児童相談所とも情報を共有し、見通しを確認する。
・実親が複雑で深刻な事情を抱えている場合もあり、実親の子どもに対する思いも様々である。実親が子どもを養育できないことの背景にある個々の問題を踏まえ、実親の抱える課題や生活問題に、子どもと里親等が巻き込まれないようにしながら、子どもと実親との交流そのものは保証する。
・一定のルールのもとで、実親との面会、外出、一時帰宅などの交流を積極的に行う。実親とのかかわりが、子どもの生活や福祉、里親等とその家族の生活を脅かす場合に限り、交流が制限される。
・交流をどのように行うかについては、養育者と児童相談所が協議し、子ども自身の意見を踏まえて決定する。交流の実施状況を児童相談所が把握し、トラブルが生じた場合の対応を明確にしておくことも大切である。
・実親の状態が不明な場合、実親の状況が子どもに伝えられていない場合、望んでも実親との交流がかなわない場合、子どもが交流を希望しない場合や、虐待を受けた子どもの場合など、子どもの状況を踏まえて、適切な配慮を行う。
・実親との交流により、子どもが不安定になり、意欲の低下や体調等を崩す場合もある。交流後の子どもの様子を把握し、気持ちをくみ上げるコミュニケーションを心がけるなど、個々の子どもの状況に応じて対応する。
(8)衣食住などの安定した日常生活
・里親等が提供する養育だけが、子どもの心身を安定させ、成長させ、生きる力を増進させるのではなく、里親等と里親等家族の存在、家族間の関係、食事、生活習慣、余暇の過ごし方などあたりまえの生活や親族・友人・地域との関係など里親等家庭での暮らしそのものが子どもを育むことを理解する。
・子どもはこうした生活を通して将来の社会生活や成長して、家庭を作る場合に役立つ技術を身につけ、家庭生活のモデルを形成することができる。
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(9)実子を含む家族一人一人の理解と協力
・家庭に子どもを迎え入れるため、家族の一部は生活に参加しないということができない。先に受託している子どもを含め、家族全員が新しく迎え入れる子どもとの生活に影響を受けることを受け止める必要がある。
・養育者や児童相談所は、新たな子どもを受け入れられる状況であるか否か、家庭や子どもの状況のアセスメントを前提としたマッチングを行い、双方が判断する。
・養育者や児童相談所は、家庭養護は実子の養育体験とは、必ずしも同じではないこと、一人の子どもが加わることによって変化する家庭内の力動の変化や個々人への影響があることを考慮する。
・養育者は受託している子どもとそれぞれ個別の時間やかかわりをもつように、実子と過ごしたり話したりする場面・時間も作ることが大切である。
・実子や既に受託している子どもに、適宜必要なことを説明する。生活を共有する立場である実子も、子どもとして意見表明できる雰囲気と関係を保つ。
(10)子どもの選択の尊重
・子どもが興味や趣味に合わせて、自発的な活動ができるよう工夫する。子ども一人一人の選択を尊重する。子どもが自分の好みや要望を表現できる雰囲気を生活の中につくる。
・子どもが自分の要望を表明するとともに、他者の要望も受け止めながら、対話ができていくように、ときには養育者が仲介しながらコミュニケーションの育ちを支える。
(11)健康管理と事故発生時の対応
・子どもの状態や発達段階に応じて、体の健康や衛生面に留意し、健康上特別な配慮を必要とする子どもについては、児童相談所や医療機関と連携する。
・事故や感染症の発生など緊急時には、子どもの安全を確保する。児童相談所と緊急の連絡方法などを確認しておく。
・災害時の避難方法や子どもの安全確保について、養育者らで確認する。食料や備品類など災害時の備蓄等を行う。
・災害などに対して備えていることを養育者の責任として子どもにも説明し、実際に見せて確認し、安心感をもって生活できるよう配慮する。
(12)教育の保障と社会性の獲得支援
・それまでの生育環境により、経験不足や基礎学力の不足など多くの課題を抱えている子どもにとって、学ぶ楽しさを取り戻し、さらには高校や大学などに進学
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する学力を獲得することは、子どもが自尊心を回復し、自立への歩みを踏み出す契機としても重要なことである。
・子どもの学力の状態に応じて、学習意欲を十分に引き出しながら、学習が安定に向かうよう工夫して支援する。必要に応じて、学習ボランティアや塾の活用を考える。
・年齢や発達状況など個々の状態に応じた社会性の獲得を目指し、体験の幅を広げるとともに、社会に出て行く子どもには、社会の一員であることが自覚できるよう支援を行う。
(13)行動上の問題についての理解と対応
・子どもが新しい環境や家族との関係に安心した時に表れる行動上の問題があることを理解する。
・子どもの行動にはメッセージが含まれていること、その子どもにとって何らかの意味があることを理解し、時には養育者同士で話すことで安心を得ることも大切である。心理的な支援を必要とする子どもについては、専門機関に相談する。
・性に関することをタブー視せず、子どもの年齢や発達状況に応じて、子どもの疑問や不安に答える。個別の状況に対応し、性の教育につながる支援を行う。
(14)進路選択の支援
・子ども自身の思いや要望によく耳を傾け、一緒に検討していく姿勢をもち、子どもの進路や就職支援など自己決定や自己選択ができるように判断材料を一緒に収集するなどして支援する。
・子どもにとって見通しがもてるよう、児童相談所や実親等と十分に話し合うことも大切である。
(15)委託の解除、解除後の交流
・円滑に委託解除できるよう、子どもの意向を尊重するとともに、児童相談所の里親担当者と子ども担当者を交え、十分に話し合う。
・進路決定後も可能な限り相談に応じ、つまずきや失敗など何らかの問題が生じた場合にも支援を心がける。
・進学や就職したあと、また成人したあとも、実家のようにいつでも訪問でき、また、相談に応じられるような交流を継続する。
(16)養子縁組
・養子制度の意義は、保護者のない子ども又は家庭での養育が望めない子どもに温かい家庭を与え、かつその子どもの養育に法的安定性を与えることにより、子どもの健全な育成を図るものである。
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・普通養子縁組は、家庭裁判所の許可を受け、実親との法律上の関係は継続され、戸籍上は養子と記載される。特別養子縁組は、家庭裁判所の審判により、実親との親子関係は終了し、戸籍上は養親の長男・長女等と記載され、養子となる年齢に6歳未満という制限がある。
・養子制度は、永続的な養育が必要な子どもが、法的に親子関係を結び、より安定感を得ることができるようにする子どものための制度であり、跡継ぎを得るための制度ではないことを理解する必要がある。
・子どもを望みながら子どものない家庭や不妊治療を受けている家庭にとっては、里親制度や養子縁組制度が選択肢の一つとなるが、養育に困難さを覚えることもある。養親が子どもの最善の利益を実践することを理解するとともに、児童相談所や支援機関等で支えることが大切である。
・養子縁組成立後、児童相談所や里親会と離れてしまう養親も多い。しかし、親子の関係を築くなかで、様々な課題や問題が生じてくる。生い立ちなどの真実告知や実親への思いや葛藤、ルーツを探すことなどに、親子で対峙し、乗り越えることになる。先輩の養親や里親との交流や児童相談所への相談など、関係者や関係機関の支援を受けることが、よりよい親子の関係を結ぶことになる。
2.自立支援計画と記録
(1)自立支援計画
・児童相談所は、子どもが安定した生活を送ることができるよう自立支援計画を作成し、養育者はその自立支援計画に基づき養育を行う。
・自立支援計画には、子どもが委託される理由や育ってきた環境、養育を行う上での留意点や委託期間、実親との対応などが記載されているので、気になることは児童相談所に相談し、必要に応じて説明を受け、見通しを確認しながら、より子どもやその家族のことを理解する。
(2)記録と養育状況の報告
・受託した子どもの養育状況を適切な文言で記録を書くことや報告することを通して、子どもや子どもに関係する状況に対する理解を深め、また、養育者自身が養育を客観的に振り返ることができる。
・また、記録は子どもが家庭引き取りになる場合は、実親にとって子どもを理解する手段となり、養子縁組をする場合は、成長の記録の一部となる。
・子どもの課題や問題点などだけでなく、できていること、良いところ、成長したところなど、ポジティブな側面も記録することは、子どものより正確な理解を促すことにもなる。
・子どもが行動上の問題を起こす場合もあるため、問題が生じた背景や状況を記録し、児童相談所から適切な支援を受ける。
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・子どもの変化や状況を児童相談所に伝え、児童相談所と一緒に定期的に自立支援計画を見直す。
3.権利擁護
(1)子どもの尊重と最善の利益の考慮
・子どもを権利の主体として尊重する。子どもが自分の気持ちや意見を素直に表明することを保障するなど、常に子どもの最善の利益に配慮した養育・支援を行う。
・子どもが主体的に選択し、自己決定し、問題の自主的な解決をしていく経験をはじめ、多くの生活体験を積む中で、健全な自己の成長や問題解決能力の形成を支援する。
・つまずきや失敗の体験を大切にし、自主的な解決等を通して、自己肯定感を形成し、たえず自己を向上発展させるための態度を身につけられるよう支援する。
・子どもに対しては、権利の主体であることや守られる権利について、権利ノートなどを活用し、子どもに応じて、正しく理解できるよう随時わかりやすく説明する。
(2)子どもを尊重する姿勢
・社会的養護を担う養育者として理解する必要のある倫理を確認し、意識化するとともに、養育者らは子どもの権利擁護に関する研修に参加し、権利擁護の姿勢を持つ。
・独立した養育の現場で子どもに密にかかわる者として、子どもが、生活の中で自分が大切にされている実感を持てるようにする。
(3)守秘義務
・子どもが委託に至る背景や家族の状況など、養育者として知り得た子どもや家族の情報のうち、子どもを守るために開示できない情報については、境界線を決めて確認し、守秘義務を守り、知り得た情報を外部には非公開で保持する。
・近隣に話をしにくかったり、里親として子どもを養育していることを周囲にどう言えばよいかわからなかったりする里親も多い。「特別な子ども」として認識されることが目的ではないので、ごくあたりまえの家庭生活を送り、養育していることの理解を得る。
(4)子どもが意見や苦情を述べやすい環境
・日常的に子どもが自分を表現しやすい雰囲気をつくり、自分の思いをいったん受け止めてもらえる安心感や養育者との関係を確保することが養育の要であるこ
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とを、養育者が理解する。
・併せて、子どもが相談したり意向を表明したりしたい時に相談方法や相談相手を選択できる環境を整備しておく。また、そのことを子どもに伝え、子どもが理解するための取組を行う。
・子どもの側からの苦情や意見・提案に対しては、迅速かつ適切に対応する。
・子どもの希望に応えられない場合には、その理由を丁寧に説明する。
(5)体罰の禁止
・体罰は、子どもにとっては、恐怖と苦痛を与えるものであり、ある行為を止めさせる理由を教えることにはならない。
・体罰はある行為を止めさせる即効性のある方法であるが、体罰という方法では、理由があれば力で他者に向かってよいことを結果として教えることになってしまう。また、子どもに自己否定感を持たせることとなる。それらの理由から、体罰がなぜ養育の方法として適切でないかを理解する。
・養育者はいかなる場合においても体罰や子どもの人格を辱めるような行為を行わない。体罰の起こりやすい状況や場面について、研修や話し合いを通して、体罰を伴わない養育技術を習得することも大切である。
(6)被措置児童等虐待対応
・子どもが里親家庭やファミリーホームでの生活に安定した頃に起こる試し行動や退行による行動、思春期の反抗など様々な行動に養育者は戸惑いながらも、対応する経験を重ねていくことで子どもとともに成長していく。
・しかし、時に子どもの行動が激しくなり、養育者の対応の限界を超えることがある。子どもも養育者も行き詰まった上での不適切な対応が、被措置児童等虐待に結びつくことを理解する。
・体罰や子どもの人格を辱める行為、子どもに対する暴力、言葉による脅かしなどは不適切なかかわりである。子どもを大切に養育したいという思いが先行し、しつけから逸脱することがないようにする。
・被措置児童等虐待防止のもつ意味とそのための取組について、十分に認識し、養育者のみならず、実子による受託した子どもへの虐待、受託した子ども間の暴力等も想定した予防体制が必要である。
・養育者も一人の人として不適切な対応をすることもある。そうした場合、子どもがそのことを表明したり、子どもから第三の大人など他者に伝えることはできるし、伝えてほしいなど、養育者が子どもに説明する。
・里親家庭やファミリーホームが密室化しないための、第三者の目や意見を取り込む意識を持ち、工夫する。
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4.関係機関・地域との連携
(1)関係機関等との連携
・子どもの最善の利益を実現するために、児童相談所や関係機関と連携し、子どもや家族の情報を相互に提供し、共有する。未成年後見人がある場合にも、連携し、情報を共有する。
・乳児院、児童養護施設、児童家庭支援センター等の施設は、地域の社会的養護の拠点であり、里親支援の役割も持つことから、里親等は、社会的養護の担い手として、施設等と良きパートナーシップを構築し、連携する。
・施設との関係を活かすには、施設側の里親理解、里親側の施設理解がともに必要である。
・施設の里親支援専門相談員は、児童相談所の里親担当職員等とともに、里親等の家庭訪問や、相談への対応、レスパイトの調整など、施設機能を活かして里親等の支援を行う。
・ファミリーホームは、地域における社会的養護の一つの拠点として存在する。子どもたちが地域の子どもとしてあたりまえに生活することは、地域の子どもにとっても大切である。
・里親やファミリーホームが、課題の多い子どもを受託し、専門的な支援を行う場合には、地域にある社会資源を活用し、また、支援を得るため、関係機関等と特に密接に連携することが必要である。
(2)地域との連携
・社会的養護を必要とする子どもの養育に対して地域の人々の理解を得るために、子どもと地域との交流を大切にし、コミュニケーションを活発にする取り組みを行うなど、養育者の側から地域への働きかけを行う。
・ファミリーホームでは、必要に応じ、ボランティアを受け入れる場合もあるが、実子や受託している子どもと同世代や、子どもが学校などで関係のある人材によるボランティアの受け入れには配慮する。
5. 養育技術の向上等
(1)養育技術の向上
・養育者らは、子どもの養育・支援及び保護者に対する養育に関する助言や支援が適切に行われるように、研修等を通じて、必要な知識及び技術の習得、維持及び向上に努める。
・社会的養護に携わる者として、養育者一人一人が課題を持って主体的に学ぶとともに、地域の関係機関など、様々な人や場とのかかわりの中で共に学び合い、活性化を図っていく。
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・研修などの場で養育者が「できていない」ことを開示できる安心感を確保する。
・ファミリーホームでは、主たる養育者は、養育者だけでなく補助者についても、資質向上のため研修会等への参加の機会を設ける。
(2)振り返り(自主評価)の実施
・養育者らは養育のあり方をより良くしていくためには、できていないことや課題の認識とともに、養育の中ですでにできていること、子どもに表れているよき変化等もあわせてとらえ、多面的に振りかえっていくことが必要である。
・ファミリーホームでは、運営や養育内容について、自己評価、外部の評価等、定期的に評価を行う。養育者だけなく、子どもも相談できる第三者委員を置くことは、ファミリーホームの養育の質を高める方法である。



厚生労働省webからの転載です。(2014年6月10日閲覧)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-56.pdf

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